これからの住宅のあり方とは?
年収の約5倍の価格で良質な住宅を購入できた時代、多くの人が「新築マイホーム」を夢見て住宅ローンを組みました。
その背景には、国の政策によって形成された「持ち家優遇の仕組み」があります。
近年もその流れは続き、住宅ローン減税の適用要件の拡大が検討されています。
政府は、減税の適用基準としてきた居住面積の目安をこれまでの50㎡から40㎡程度に引き下げる方向で調整中です。 この方針は2035年度までの住宅政策の指針に位置づけられ、年末にかけて与党税制調査会で議論が進められる見込みです。
実現すれば、2026年度以降はより幅広い層が減税の恩恵を受けられる可能性があります。 本コラムでは、こうした政策の変遷を踏まえながら、「持ち家」が象徴してきた日本社会の価値観と、これから求められる住宅のあり方について考えていきます。
近年もその流れは続き、住宅ローン減税の適用要件の拡大が検討されています。
政府は、減税の適用基準としてきた居住面積の目安をこれまでの50㎡から40㎡程度に引き下げる方向で調整中です。 この方針は2035年度までの住宅政策の指針に位置づけられ、年末にかけて与党税制調査会で議論が進められる見込みです。
実現すれば、2026年度以降はより幅広い層が減税の恩恵を受けられる可能性があります。 本コラムでは、こうした政策の変遷を踏まえながら、「持ち家」が象徴してきた日本社会の価値観と、これから求められる住宅のあり方について考えていきます。
年収5倍が目安だった「住宅の黄金時代」
住宅購入は当たり前だった
1992年、宮沢内閣が閣議決定した「生活大国5か年計画」では、
勤労者世帯の平均年収の5倍程度で良質な住宅を取得できる社会を目指すと掲げました。
当時の日本はまだ「年功序列」や「終身雇用」を前提とした、安定した社会だったのです。
住宅は資産と安定の象徴
給与の伸びを見越して長期のローンを組み、退職時には完済。
この標準的な人生設計が、多くの家庭に共有されていました。
高度経済成長期からバブル崩壊にかけて、住宅は「資産形成」と「安定の象徴」を兼ね備えた存在だったのです。
政策がつくった「持ち家社会」
戦後、日本は深刻な住宅不足に直面しました。
政府は公営住宅や住宅公団(現UR)による賃貸住宅供給で問題を一時的に解決しましたが、1960年代半ばから「持ち家促進」へと大きく舵を切ります。 つまり、日本の持ち家社会は、政策的に形成され、賃貸は不利に設計されてきたと受け止めることも出来ます。
こうした政策的な後押しによって、「家を買うことが当たり前」という価値観が社会全体に定着していったのです。
政府は公営住宅や住宅公団(現UR)による賃貸住宅供給で問題を一時的に解決しましたが、1960年代半ばから「持ち家促進」へと大きく舵を切ります。 つまり、日本の持ち家社会は、政策的に形成され、賃貸は不利に設計されてきたと受け止めることも出来ます。
こうした政策的な後押しによって、「家を買うことが当たり前」という価値観が社会全体に定着していったのです。
持ち家を支えた三本柱
-
POINT1住宅ローン制度の整備と金融支援長期・低金利の住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)を設け、誰もが家を買いやすい環境を整備しました。
-
POINT2税制による持ち家優遇住宅取得に関わる所得控除や固定資産税の軽減措置を導入し、「買うこと」にメリットを集中させました。
-
POINT3土地神話と都市開発の推進高度経済成長期の地価上昇を背景に、「土地は持つほど得をする」という意識を社会全体が共有するようになりました。
都市開発における住宅用地は、地主層にかかる相続税による「富の再分配」によって、市場に放出された土地である事も重要なポイントです。
富の再分配による不動産の循環が、個人の持ち家促進に寄与してきたのです。
富の再分配による不動産の循環が、個人の持ち家促進に寄与してきたのです。
今も続く「持ち家優遇」とその限界
現代においても、「家を買う人」を支援する仕組みは数多く存在します。
一方で、賃貸居住者への支援は限定的であり、制度の偏りは今も続いています。
こうした制度設計は、現在も「持ち家」を前提とした居住スタイルを支える骨格として機能しています。
賃貸居住者への支援は限定的であり、「家を買うこと」が社会の常識となる背景には、政策側の意図的な仕組みづくりがあったのです。
下記に、具体的な事例を挙げてみました。
こうした制度設計は、現在も「持ち家」を前提とした居住スタイルを支える骨格として機能しています。 賃貸居住者への支援は限定的であり、「家を買うこと」が社会の常識となる背景には、政策側の意図的な仕組みづくりがあったのです。 下記に、具体的な事例を挙げてみました。
-
01
住宅ローン控除の拡充
省エネ住宅や ZEH水準省エネ住宅 など高性能住宅を購入・入居した場合、制度上最長13年間、年末時点のローン残高の 0.7% を所得税から控除できる仕組みが設けられています。
借入限度額や控除対象期間は住宅の性能や入居時期によって異なっており、最大年間35万円の控除を受けることが可能です。 -
02
取得・保有時の税負担軽減
新築住宅を取得した際には、購入時にかかる不動産取得税、そして所有後の固定資産税において軽減措置が設けられています。これにより、新築取得者の経済的負担が大きく軽くされ、「買うこと」が経済的にも優位に設計されてきました。
土地・建物の価格高騰が続く中、この税制支援は購入の後押しとなり、持ち家志向を制度的に支えているのです。 -
03
「老後2000万円問題」に見る持ち家前提
いわゆる「老後2000万円問題」の試算では、住宅費がかからない=持ち家を前提としたライフプランが暗黙にベースに据えられています。 賃貸居住者にとって「住宅を所有する」という前提がなければ、同じ前提条件では成り立たない試算が多く、制度・試算の両面で“持ち家前提”の価値観が根強く残っています。
これが、現代の制度的優遇の背景にもつながっていると言えるでしょう。
次世代に求められる「住まい方」
日本が築いてきた「持ち家社会」は、戦後復興から経済成長を支えた成功モデルでした。
しかし、社会構造や価値観が変化した今、その制度的前提は大きな見直しを迫られています。
これからの時代に求められるのは、「持ち家か賃貸か」ではなく、「どう暮らすか」という視点です。 家を所有することだけが目的ではなく、その空間をどう活かし、どんな人生を描くかが問われています。
国の制度も、個人の選択も、持ち家社会の次を見据えた、しなやかな住まい方への転換が始まっています。
これからの時代に求められるのは、「持ち家か賃貸か」ではなく、「どう暮らすか」という視点です。 家を所有することだけが目的ではなく、その空間をどう活かし、どんな人生を描くかが問われています。
国の制度も、個人の選択も、持ち家社会の次を見据えた、しなやかな住まい方への転換が始まっています。
この記事を書いた人
不動産あい子@浦和
住まいに関する話題や、暮らしに影響する社会の動きをやさしく解説しています。
専門的な内容も、できるだけわかりやすく、身近に感じてもらえるよう心がけています。
社内データや専門スタッフの知見をもとに、「専門的だけど読みやすい」記事をお届けします。
お問い合わせ
事業承継に関するお問い合わせは、下記フォームをお送りください。
Related
関連記事
Related
関連記事
-
2025.10.27マイホーム神話の終焉|変わりゆく時代に求められる「新しい住まいの選び方」 -
2025.08.31不動産 | 借地権 -
2025.10.14不動産 | 地域と暮らしのこれから -
2025.08.31不動産 | 事業承継 -
2025.09.12不動産業支援サービスとは? -
2025.08.31相続対策の相談 | 不動産の借地権なら不動産ブレーンバンク株式会社 -
2025.08.31買取り価格の査定 | 不動産の借地権なら不動産ブレーンバンク株式会社 -
2025.08.31地代滞納の解決 | 不動産の借地権なら不動産ブレーンバンク株式会社 -
2025.08.31相続人多数の借地権問題解決 | 不動産の借地権なら不動産ブレーンバンク株式会社